海外ドラマを観ながらの英語学習は、楽しみながら続けられるのでおすすめです。
今回おすすめする作品は『スーツ(SUITS)』です。
『スーツ』の概要
スーツと言っても、ファッション関係のドラマではありません。
このスーツ(suits・複数形)は「訴訟」を指しており、法廷もののドラマです。
主人公は法律事務所のエースであるハーヴィーと、犯罪ギリギリの行為に手を染めてきた青年マイク。
ひょんなことからハーヴィーに出会ったマイクは、弁護士として彼の下で働くことになります。
結託して、学歴を偽って。
驚異的な記憶力を持ち、頭の回転も早いマイクですが、実務経験はなし。
法曹界という未知の世界に身を投じた彼は、くじけそうになりながらも前に進みます。
見るからに勝ち組で、傲慢で、自分のことしか考えていないと評されるハーヴィーと、数々の訴訟に挑んでいくマイク。
負けることは許されない世界。
全く違う性格の二人のコンビで展開されていく物語に、思わず引き込まれてしまいます。
法廷ものなのに法廷シーンはほとんど登場しません。
そして法廷ものというお堅いイメージからは外れる、ユーモアの散りばめられた会話もふっと笑えて魅力的です。
勝つか負けるかの「勝負の世界」。
言葉巧みに戦い抜く強い会話は心に残ります。
ちょっぴりユーモアも交えた「言葉の応酬」を楽しみましょう。
『スーツ』の評価
ジャンル | ヒューマンドラマ、法廷 |
セリフの速さ | |
セリフの量 | |
日常英会話で使える度 | |
旅行英会話で使える度 | |
ビジネス英会話で使える度 | |
笑い・ユーモア | |
1話の長さ | 40分 |
シーズン1放送開始年 | 2011年 |
製作国 | アメリカ |
『スーツ』の発音
アメリカ英語です。
作品の性質上、専門用語や早口な場面も多くありますが、発音の一つ一つはそれほど強い癖はなく、聞き取りやすいです。
『スーツ』で学べる英単語やフレーズ
- Look at you!
- Gotta go.
- Don’t even think about it.
- Have I made myself clear?
- Litt up.
- I love the smell of napalm in the morning.
ベストクローザーと呼ばれるハーヴィー。
クローザーとは野球で「抑え投手」を指す言葉として使われますが、法曹界では訴訟をまとめ上げ、勝訴に導く担い手を指します。
日本とは裁判制度が違うので、すっきりとした訳語はありませんが、文字通り「締める人」です。
巨大なファーム(法律事務所)は、さながら戦場のように忙しく時間が過ぎていきます。
激怒したクライアントのものに呼び出されたハーヴイーは、しれっと現場に現れ、得意の話術とハッタリで相手をねじ伏せます。
早速、彼の傲慢ぶりがにじみ出る場面です。
一方、マイクは病気の祖母の治療費を工面するために、親友から違法薬物の取引という危ない仕事を引き受ける決心をします。
指定場所はホテルの一室。
親友からの指示は「身なりを整え、スーツを着て、指定場所に行け」というもの。
親友のマンションで準備をしていると、親友のガールフレンドが不意に現れます。
1)Look at you!
直訳すると「あなた自身を見なさい」となりますが、「褒める場合」と「非難する場合」、両方に使えるフレーズです。
普段ヨレヨレのTシャツにジーンズといった出で立ちのマイクのスーツ姿に、親友のガールフレンドが驚きと感心を込めて言います。
Look at you!
(あら、素敵!)
よそ行きの素敵な服、ビシッと決まった制服姿、あるいはクールなコスプレ。
見た目で感心させられた時に「Look at you!」と使います。
訳す時は「素敵!」「すごい!」「カッコイイ!」などが当てはまります。
新婦の真っ白で美しいウェディングドレス姿に「Look at you!」と言葉をかける新郎は、感動で胸が一杯のはずです。
看護師になった娘に「Look at you!」と言葉をかける父親の目には、白衣の天使のその制服姿は凛々しくて眩しいでしょう。
何か特定のものを含めて褒める場合は、withをつけると明確にできます。
Look at you with the beautiful hat!
(その綺麗な帽子、素敵だね!)
褒められた方も、気分がいいはずです。
一方、非難の場合は「なんだそのなりは!」「情けない顔だな!」というように、やはり外見についての示唆になります。
決闘に負けてボロボロなあなた。
相手は非情にもあなたにこう言うでしょう。
Look at you!
(なんと情けない!)
あくまでもネガティブな意味ですが、必ずしも全面非難ではありません。
例えば、子供が公園で遊んで帰宅すると、頭から足まで泥だらけ。
お母さんがそんな姿を見て言います。
Look at you!
(まあ、ひどい格好!)
ネガティブの中にも、あまりのひどさと元気よく遊んできた姿に笑ってしまうかもしれません。
2) Gotta go.
危険な仕事に気もそぞろなマイク。
それを知らない親友のガールフレンドは、マイクの「新しい仕事」の初日を励ましてくれます。
後ろめたさに居たたまれないマイクは、すぐにその場を離れたくて仕方がありません。
Gotta go.
(もう行かなくちゃ。急いでるんだ。)
とてもカジュアルな言い回しで、気軽に使えるフレーズです。
gotta は got to の短縮形(want to を wanna とするのと同様)ですが、この got (get) には「持っている」などの意味はありません。
もう少し詳しく解説するならば、本来 have got to となります。
gotta は have to に置き換えることができるので、そのあとに続く動詞によって色々と使えます。
Gotta do.
(やらなくちゃ。絶対やるんだ。)
doの後にthisなどの目的語をつけることもできます。
Gotta speak with her.
(彼女と話をつけなくちゃ。)
ちょっと差し迫ったシチュエーションを想像させますね。
その頃、マイクの親友は予期せぬ窮地に陥ります。
どうやら取引は罠らしい。
親友は顔面蒼白。
それを察知した悪い連中は、仲間に知らせるなと彼を脅します。
3)Don’t even think about it.
自分にとって不利な行動を取ろうとする相手に対して、「そんなバカなことは考えるな」と牽制する表現です。
evenは〜さえも、〜ですら、といった意味です。
つまり「それを考えることすらするな」と完全な強要です。
evenのような副詞は、置く位置を迷うことがしばしばあります。
なので「Don’t even」をひとまとめに覚えて置くと、すんなりと出てくるようになります。
Don’t even look at it.
(絶対に見るなよ。)
もちろん even をつけない英文も禁止の命令文として成立しますが、禁止をより強調する役目をしています。
Don’t even try.
(試そうとするな。)
tryの後に何もつけないことによって、様々な場面で使えます。
答えのない謎を解こうとしている人に、敵うはずのない相手に挑もうとしている人に、「無駄だよ」と一言告げることができます。
悪事に引き込まれそうな友人がいます。
止める手立ては、根源となる人物とのコンタクトを断つこと。
Don’t even call him.
(絶対に彼に電話するなよ。)
会うどころか電話すらしてはならない、と非常に強い要請、つまり禁止命令となります。
4)Have I made myself clear?
紆余曲折の後にハーヴィーの部下となったマイク。
そんなマイクに、別の上司ルイスが揺さぶりをかけてきます。
ルイスにとって、ハーヴィーは目の上のたんこぶ。
なんとかして彼を失墜させたいと考えているのです。
ルイスは自分の立場や権力を示すため、マイクを呼び出し、不敵な笑みを浮かべながらそれらを見せつけます。
Have I made myself clear?
(私の言ったことがわかったか?)
直訳すると「私は私自身を明確にしましたか?」となり、当然会話として成立しません。
これは「Do you understand?」と言い換えることができる、強めの表現で、「私の言ったことがわかったか?」となります。
完了形を使うことによって行動が完結し、それを自分の立場で疑問文にすることで、この表現が成り立ちます。
この表現には「あなたは理解したはずだ」というニュアンスも含まれます。
理解したのだから、自分の言ったことに対して反することはないだろう、と。
たとえば傲慢なリーダーがいるとします。
彼は色々と言ってきます。
「ここでは俺がリーダーだ。俺の命令には絶対に従え。違反したものには厳しい罰が与えられる。Have I made myself clear?」
こんな風に言われたら、もう逆らえません。
学校の先生にも言われるかもしれません。
課題をやってこなかったあなた。
授業が済んでも友達と無駄話に花を咲かせています。
そこに先生が現れます。
「今すぐバッグを持って家に帰ること。帰ったら直ちに課題に取り組むこと。明日、持ってこなければあなたを停学にします。Have I made myself clear?」
さあ、今すぐに帰って課題に取り掛かりましょう。
5)Litt up.
大人気ドラマ『SUITS』はハーヴィーとマイクというイケメン2人のバディものですが、お笑いパートを全て担っているルイス・リットも忘れてはいけません。
「Litt up.」とは彼がよく使うセリフです。
彼の名字を動詞にしているので、もちろん辞書には出ていませんが、日本語では「やっつけてやる」「倒してやる」という意味で使われており、字幕には「リットしてやる」などと表示されています。
実は、英会話において「固有名詞が動詞化する」ことはかなり多いです。
たとえば「Xerox it.」は「それ、コピーしておいて」という意味で、会社名である「ゼロックス」が動詞として使われています。
「Google it.」は分かりますよね。
「Hoover」は元々イギリスの掃除機メーカー名ですが、「掃除機をかける」という意味で辞書に載るほど定着しています。
そうそう、ドラマでは有能な秘書ドナがルイスにLitt upマグカップをプレゼントするのですが、このマグカップ、ネットで買えます(笑)
6)I love the smell of napalm in the morning.
宿敵ハードマンがハーヴィーの所属する法律事務所に帰ってきたときに、ハーヴィーが独り言のように言うセリフです。
とは言っても、ドラマオリジナルの台詞ではなく、有名映画『地獄の黙示録』の有名な台詞の引用です。
『SUITS』の魅力は、なんと言ってもそのオシャレでハイセンスな会話。
映画の引用も外せない重要な要素です。
ハーヴィーとマイクがあれほど親密な関係を築いている理由の一つには、2人で映画の引用ごっこができる点があります。
あるときマイクはルイスに映画の引用ごっこを仕掛けますが、ルイスはハーヴィーのように返すことができず、マイクはハーヴィーとの特別な関係に気付くシーンもあります。
そして、今回のフレーズ。
『地獄の黙示録』はベトナム戦争映画なので、その有名な台詞をつぶやくことで「これから事務所内で戦いが始まる」と、ハーヴィーの想いを表現してるのです。
こういう背景は字幕には出てこないものですが、映画の引用ごっこは有名な映画から引っ張ってこられるので、「あ、これは!」と気付けると、視聴の楽しさも倍増します。
『スーツ』はこんな方におすすめの作品
- 法廷ものが好きな方
- 皮肉やユーモアでの会話を身に付けたい方
- カジュアルなやり取りを楽しみたい方
『スーツ』で英語学習の感想
『スーツ』はストーリーも作品作りもしっかりしたもので、ドラマなどを見る際にいつも参考にするIMDb(Internet Movie Database)でも10ポイント中8.6ポイントと高い評価を受けています。
紆余曲折を経て採用されたマイクですが、ハーヴィーはすぐにマイクに最初の担当を与えます。
案件はプロボノ(pro bono・無償で行われること、奉仕、慈善)。
法制度や裁判方法など、色々と馴染みのないアメリカの法曹界はとても興味深いところです。
「訴訟」「弁護士」「案件」と普段使わない、あるいは使っていても別な意味で知っている単語も多く出てきます。
キーワードになる言葉もあるので、気になるところは字幕や辞書を駆使してきちんと押さえると英語力も上がります。
二人の主人公とそれを取り巻く登場人物たちのやりとりには、細かいけれど「使える」と思える会話がふんだんにあります。
公判も日本のものとかなり違うので、楽しめるポイントになります。
訴訟相手の弁護士、裁判官とのやりとり、言葉の応酬は、シリアスなシチュエーションにも関わらず、笑えるポイントもたくさんです。
アメリカの陪審員裁判は「いかに陪審員を納得させるか」にかかっています。
なので弁護士は話術に長けている必要があります。
それには当然しっかりとした知識や、時には閃きも必要になります。
主人公の二人が能力を遺憾なく発揮できる場面です。
少し早口なハーヴィーは、聞き取れない会話もあるかもしれませんが、マイクの応答でそれを補うことができます。
『スーツ』が観れる動画配信サービス
『スーツ(SUITS)』はHuluで配信されています(最新の配信状況は公式サイトでご確認ください)。
Huluは「定額制」&「全動画が見放題」になる動画配信サービスです。
英語字幕や吹替の切り替えができ、2週間無料トライアルでも観ることができますので、法廷ものやヒューマンドラマが好きな方は視聴してみてはいかがでしょうか。
海外ドラマを楽しみながら英語学習もできて、おすすめです!